「雨きらキリン」
えとぶん アルザック・ネゾン
今日の雨は
いつもとちがいます
明るく晴れた空のどこかから
雨のつぶが
ぱらぱらとおちています
がらちがいの雨がさを
くるくる回しながら
しまうまちゃんの頭は
ちょっと
ぬれてしまいました
キリンさんも
かさを半分ひらいて
頭を入れたり出したり
「お天気雨ですね」
少しだけぬかるんだ草道を
ペチャペチャ
ぴょんぴょんぴょーんと
はねてゆくと
ゆらゆらキリンさんがゆれて
水たまりの中で笑っています
「草花たちがよろこんでますよ」
どのきせつもどんなお天気も
みんなだれかのため
長いことおへやで
本をよんでいたころ
キリンさんが
はなしてくれたように
このふしぎな雨も
よろこんでいるひとが
いるのです
(どこからふってくるんだろう)
空を見上げてもわかりません
まぶしい光のつぶがいっぱい
タテガミやまつげに
きらきらのしずくをのせて
キリンさんの目の中は
すきとおった空の色
「虹はどこでしょう」
キリンさんの声で
かけっこのはじまりです
キリンさんのかさは
もうブンブン回すのにしか
つかっていません
いつまでも明るい草道で
どろんこはねて
ふたりともキリンもように
なりました
「キリンのパン」 文 夏萩しま
キリンのパンは、特別な、金曜日のパンです。焼きたてが送られてきて、紙袋を開けると、香ばしいずっしりとしたちょうどいい硬さのパンが美味しそう。
さっそく、ポットにお茶をいれて、エプロンのついた服を着て、靴下もぎゅっと引っ張って、坂道を歩いて行きます。今日は朝からお天気雨で、どこもここもしっとりと濡れています。
森のようになった通路には柵がずっと続いていて、ところどころについている木の札には「さくのなかはキリンです」と書いてある。その札を3つ数えたところで、台の上に立って見回すと、キリンさんが見えます。椅子にビニルを敷いて、座ってお茶を注ぎながら、だんだん大きくなるキリンさんを待っています。
長い足で早足だから、もつれそうに見えるけど、キリンさんは少し斜めになりながらスピードを落として上手に止まります。三角形になるように前足を少し広げて、頭をゆっくり下げてくるのを、ずっと上まで見上げていると、少しずつ首が痛くなってくる。いつも何か言いにくそうに、長い首の先で青いベロをもぐもぐしてるし、長いまつ毛も伏し目がち。話しかけるのはいつも私の方。
「キリンさんこんにちは、ご機嫌はいかが?今日のパンはね、胡桃が入ってるの、少しずつ、半分こね」
私が座ってるところまで、キリンさんは首を下げて、それから青いベロをびっくりするくらい伸ばして、私の手からパンを食べる。私ももう半分を食べる。キリンさんはもぐもぐしながら私をじっと見る。だからちょっと嘘をついた。
「パンはもうないの、ごめんね」
「パンはじゃあまた今度」
キリンさんは高いところから降ってくる声で言って、空にぶつかる耳を揺らしながら、長めのしっぽをべちべち鳴らして丘の向こうへ行ってしまった。雨の雫がいっぱい飛んできた。
ほんとはまだパンはあったって、伝わったかな。伝わったから、ゆらゆらゆったり歩いていったかな。次の約束はあるような無いような。でも、またこの坂道を歩いてきたら、パンの匂いで私が来たのがわかるでしょ。
エプロンのパンくずは、鳥さんのご馳走。ばさばさとはたいて、また坂道を歩いて帰ろう。キリンさんに会えた日はいい日。
キリンさんのすぐ上の青空に、白い月が浮かんでいて、ぷかぷかしてるから、もっといい日。キリンさんはよく見えるでしょ。同じ月を見れたね、よかった。
「あめきらきりん」
詞/曲 /イラスト: Aruzak-Nezon
+氷見野ハオ
編曲/演奏/うた: おなかグーグース
会いたい気持ちが
雨になって溢れてる
きのうはぴーかん
でももう我慢できない
待ち切れない朝
雨キラキラ
キリンさんごきげんかな
今日も笑ってくれるかな
みんなのためのとびきり笑顔
わかってるよ
でもキラキラ
気分はハッピー
このままこのまま
見つめているよ
空を映す瞳
見上げているよ