月毎よむよむ

月毎の、お話と絵本

9月 月

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「月」     文・表紙 夏萩しま

 

 

 

行儀悪く布団の端から脛を放り出して、窓から入る月明かりに映してみたりしている
なかなか寝付けない明るい夜だ
そこにいてくれるのは月
笑っていたり、びっくり顔だったり、薄く心配げだったり

何か話しかけるのを待っていてくれるように
いつもそんな風情で雲間を移動していく

名前を呼びかけたらその人の姿が見えるという「満月鏡」の頃は
布団からさらに体を滑り出させ
さらに白く明るんだ月の
その光を全身で浴びるためにさらに長く伸びて
光の幅に収まろうとしてみたり

あ、
「満月鏡」の向こうから見えているかも
などと、気づいて照れてみたり

夜が優しく風を送ってくる
柔らかく形をなくす体になって
空気の震えを包み込む
マツムシの声が通り抜ける

明日は雨なのか
今だけ晴れているのか
それとももうすぐ降り出すのか
明日までに降って
すぐに晴れるのか
雲が重なる
雲が離れる
「満月鏡」がうっすらと曇る

、、、空を見ていたつもりが
大きな夜にすごんと落ちる
で、目がまた冴える

決まりごとはないのにしょっちゅう月を見あげる
何か気配がするのだ
あとから気づくのは私で
いつも月が先に私を見ている
マツムシはどうぞご勝手にと鳴いている

清しい夜に染み渡ってゆくのは
どうやら溶けてしまった私らしい

月は次の空に泳ぎ渡ったようだ

 

 

 

 


「まんまる半分こ」
 詞 Aruzak-Nezon


涼しくてバス停一個歩いた
どら焼きは一個しかない
ほんとは分けっこしたくて
わざといつも一個買う


今この時間、どうしてるかな?
別のことしてる、ル〜
当たり前だ、知ってる、ル〜
だから犬みたいにベロ出して
待ってられるんだ


だって何も考えない
優しくして、教えてくれた通り


もういつからこうして
人は馬鹿だと言うよ
こうしてるのが好きなんだ
この心にいつも会える


いつでも会ってるなんて、uh〜だけど
みんな知らない
みんな知らない、ル〜
だから犬みたいにベロ出して
待ってられるんだ


本当だってわかるもの
美味しいねって両方耳が震える


まんまるを半分こ
同じだけ食べる
同じものを食べる
もうすぐ十三夜
分けっこすると
ちょうど半分こ


まんまるじゃなくても
嘘はないでしょ
信じていればいい
分けっこしたい
ちょうど半分こ
早く分けっこしたい

 

 

この歌を歌いながら、よく月と一緒に過ごす。機嫌のいいときもひん曲がっているときも、なぜかずっと一緒にいたい。いつも先に見つけられてしまうのは何故なんだ?ほんとにいつも。ずっと見られてるんだろうな、と良い方に考えとく。いろんな顔をみせてくれるけど、月は嘘を言わない。本当のことも言わない。問うことはいらないのじゃないか?答えは自分の中にあるから、と思ってる。少しは尋ねて欲しいのかな?でもその顔を見ているだけで、なんでもどうでもよくなる。今、一緒にいられて説明もいらなくて、なんとなくひとりのときよりも落ち着く。月は静かにそばで笑っている。